第18回中村酒店酒の会

山間・越の白鳥の呑み比べを楽しむ会

2014/9/20に開催した、山間・越の白鳥の呑み比べを楽しむ会のページです。今回は本格的な利き酒に挑戦して頂く、いつもとは少し違った趣向で開催しました。

テーマ

同一タンクで仕込まれたお酒のさまざまな味の違いを楽しんでみよう

当店では2014年2月より「山間」の取り扱いを開始しました。これを以て当店では、「越の白鳥」と合わせて新潟第一酒造の醸す人気の2銘柄をお楽しみ頂くことができるようになりました。
この2銘柄が、搾りの部位の違いよってブランディングされていることはご存知でしょうか。同じタンクで作られたお酒でも、中取りは山間として、荒走りと責めの合併は越の白鳥として販売されているのです。(さらに「山間」は無濾過であることが条件となっています。)

このような搾りの違いに着目してみると、山間と越の白鳥を比べたとき、お客様は具体的にどのような味わいの違いを感じるのでしょうか。
また、同じタンクで仕込まれた山間のなかでも、澱がないものとあるもの(にごり酒)の味わいの違いはどうでしょうか。
他にも、火入れしたお酒と生のお酒など、具体的なポイントを持って飲み比べることで、それぞれのお酒の個性や面白さが理解できます。

こうした観点から、今回の酒の会は、初めて本格的利き酒会スタイルを取り入れて、山間と越の白鳥に親しんで頂きました。

お酒の種類

山間の最大の特長は、搾ったばかりの発酵ガスを含んだフレッシュかつ濃厚でインパクトのある旨味にあると考え、基準酒(A)は「かめ口直詰め中取り無濾過生原酒」を選びました。
比較対象はそれ以外の製品とし、仕込みタンクの違いを比べるためにラインナップに加えたC以外は、全て同じタンクの11号で揃えています。酒米は全て五百万石・こしいぶき、精米歩合は60%です。

商品名 仕込み 火入 搾り 備考
A 山間特別純米酒仕込み11号かめ口直詰め 11号 中取り 4月下旬発売。上槽後直詰めし、貯蔵期間あり。
B 山間特別純米仕込み11号亀口瓶燗 11号 生貯蔵後瓶燗火入れ 中取り 8月上旬発売。生貯蔵後、火入れ、更に貯蔵。
C 山間特別純米仕込み7号 7号 中取り 2月中旬発売。上槽時すぐに充填機で直詰め。
D 越の白鳥特別純米仕込み11号無濾過原酒 11号 生貯蔵後火入れ 中取り 8月上旬発売。生貯蔵後火入れ。
E 山間特別純米仕込み11号にごり酒 11号 上槽の際別取り 3月下旬発売。上槽の際、別取りでもろみを濾す。

※画面が小さい場合、表が全て表示されない場合があります。その場合は、表を横にスクロールしてご覧ください。

利き酒の方法

おひとりにつきグラスを2個用意し、ひとつのグラスは基準酒となるA用、もう一方のグラスはそれ以外の酒用としました。利く順番はB、C、D、Eで、Aと比較しながらそれぞれ時間を区切って利いて頂きました。

Aのお酒と比べてB~Eそれぞれのお酒はどの程度違いを感じたか、全体的な印象と香りの強弱及び甘み、酸、苦味の濃淡について、数直線に感覚的な値の表記と利き比べた感想の記入をお願いしました。

当日の様子

先入観を取り除くため、全てのお酒をブラインドで提供し、種類が推測できないように店内の冷蔵庫に陳列してある山間と越の白鳥コーナーにも目張りしました。
初の利き酒会スタイルの導入ということで、「今までとは違って本格的だねぇ。」と驚きのお声を頂きました。
ご参加頂いた23名のお客様は、それぞれご自身の味覚のみを頼りに、味わいの違いに真剣に向き合ってくださいました。

後半は純米大吟醸や純米吟醸のお酒も追加してお酒談義が弾む会となり、1800mlを8本、720ml2本ほぼ完飲となる盛況ぶりでした。

結果と考察

詳細な結果については、グラフの通りです。

※画面が小さい場合、グラフが全て表示されない場合があります。その場合は、グラフを横にスクロールしてご覧ください。

Aの「山間 特別純米仕込み11号 かめ口直詰め」は山間ブランドのスタンダードで、味わいのインパクトが端的に感じられるという理由で基準酒に選びました。お客様は、「華やか」「ぴちぴち」「甘み」などのことばでこのお酒の特徴を表現しています。
このAと比較した時のB~Eのお酒の感想について、以下の様なポイントをつかむことができました。

B: 山間・特別純米仕込み11号かめ口瓶燗

BとAの違いは火入れの有無です。火入れをしたBは生酒であるAより穏やかな印象になるのではないかと予想していました。

やはり皆様の回答には「すっきり」「穏やか」などと表現されています。また味わいについては「ビター」を感じた方が多かったようです。

落ち着いた香りとビターな味わいが特長で、濃くても穏やかな味わいが山間のなかでも食中酒向きだといえます。

C: 山間・特別純米7号かめ口直詰め無濾過生原酒

同一タンクで仕込んだお酒の違いを楽しむことがテーマですが、仕込みタンクが違うお酒も試してみようということでラインナップに加えました。

CはAと同じ酒米で精米度合も全く一緒ですが、仕込みタンクが違います。もしかしたら明確な違いが現れにくいのではないかと予想していたのですが、多くの方が「しゅわしゅわ」というような発泡感を表現し、酸味を強く感じていらっしゃいます。そのため、Aと比べてやや淡めで軽快感のある味わいという感想を得ました。

同スペックでもタンクの違いによって発泡感の強弱に違いがあるというのもおもしろいポイントですが、明確な酸味の違いという点が当店にとって興味深い結果でした。このような酸味の違いは何に由来するものなのか、次回蔵元にお会いするときにぜひ質問してみたいポイントです。

D: 越の白鳥・特別純米仕込み11号無濾過原酒との比較

DとAは、搾りの部位と火入れの有無というふたつの相違点があります。Dは荒走りと責めの合併で火入れ、Aが中取りの火入れ無し(生酒)です。

Dは「すっきり」「スルスル入る」「飲みやすい」などのことばで表現された方が多く、全体的にAよりもおとなしく穏やかな印象でした。数字上はAと比較して弱い印象がありますが、コメントでは好意的な内容が多く、違う味わいによる別の美味しさを捉えていることがわかります。

このおとなしく穏やかというDの特長は、中取りで火入れされているBと同じ傾向です。しかしBではビターな味わいを感じる方が多かったのに対して、Dではビターさは弱めという結果が出ました。この2点に注目してBとDの比較をすると、香り、甘みはDがBよりも弱い傾向にありますが、Aとの比較ほど顕著ではありません。つまり、火入れの有無と搾りの部位は、印象という点においては同じような作用をしていることがわかります。一方でビターさに関してはDは、火入れであっても苦味も穏やかな結果となり、やはりコメントの「スルスル入る」「飲みやすい」と言った言葉を裏付ける結果となりました。

中取りを贅沢に集めた山間が新潟酒の淡麗イメージを覆す味というなら、越の白鳥はそれらが同居した毎日飲んでも飽きない美味さをもつお酒ということです。

E: 山間・特別純米仕込み11号にごり酒

最後のEは搾りの違いです。にごり酒はインパクトがあるので、Aと比較して全体の印象も酸の印象もかなり違うのではないかと予想していました。

印象は数値では濃厚とした人が多くみられます。これは予想した通り、香りの強さと濁りによるインパクトのためだと考えられます。一方コメントでは発泡感によって「さっぱり」「フレッシュ」との意見も見られます。この「さっぱり」などのコメントは酸味の数字に表れていて、強い酸味を感じたとの回答が多く見られました。もちろん発泡感による刺激の誤認もないとは言えませんが、濃厚でありながら爽やかさが同居するこのお酒の特徴がグラフからも読み取れる結果となりました。

もうひとつ特徴的な点として、甘みを控えめに感じる人が多かったことがあります。一般的ににごり酒は甘いという先入観がありますが、山間の場合はAの感想にも出たようにしっかりとした甘みが印象的なためか、Dの発泡感を伴う爽やかさやもろみの優しい甘味が弱い印象となったようです。しかし、コメントでは「果実味」などの言葉も多く見られ、甘さ自体が不足しているわけではなく、甘さの傾向が異なっていたのだと読み取れます。

Eのお酒は、一口飲んだ時のリアクションが一番大きかったお酒です。ご自宅でデイリーに楽しむのはもちろん、特別な日の乾杯酒としてもお楽しみ頂けると思います。(開栓にはくれぐれもご注意下さい。)

総括

今回の山間と越の白鳥の飲み比べからは、以下の様な特長がみえました。

中取り無濾過生原酒

華やかで濃厚な味わい

中取り無濾過原酒

落ち着いた味わい、香りが控えめで穏やか

荒ばしり・責め無濾過原酒

飲み飽きしない穏やかでスッキリしたお酒

中取り生原酒にごり

にごりの濃厚さと発泡感の爽やかさ、質の違う甘み

火入れの有無、搾りの違いといった日本酒に関する本を読んで得られる知識や情報は、実際に比較体験することでそれぞれのお酒の個性やおもしろさという形で実感して頂けたと思います。

同一仕込みタンクの利き比べは、当店で越の白鳥に続けて山間の取り扱いが始まってから、ぜひお客様たちに提示させて頂きたいと温めてきたテーマでした。今回はその念願が叶った嬉しい会となりました。

おすすめの飲み比べ

違う蔵のお酒を比べることはよくあるかもしれませんが、今回の利き酒会のように、ひとつの蔵の商品で同じような規格のお酒を飲み比べてみるというのもなかなか興味深いものです。
山間、越の白鳥以外にも、中村酒店で扱っているお酒の中でこうした飲み比べが楽しめるブランドがあります。

例えば、「屋守」(商品一覧)では、同じ純米酒の生バージョン、火入れバージョン、搾り違いの比較が楽しめます。

  • 屋守 純米 中取り 無調整生
  • 屋守 純米 中取り 無調整生詰
  • 屋守 純米 荒責 無調整生

そして、「鶴齢」(商品一覧)では、特別純米という同一規格かつ同一精米度合いの無濾過生原酒で、酒米違いのラインナップが揃っています。

  • 鶴齢 特別純米 無濾過生原酒 山田錦55%
  • 鶴齢 特別純米 無濾過生原酒 美山錦55%
  • 鶴齢 特別純米 無濾過生原酒 越淡麗55%

また同じく「鶴齢」では、山田錦の規格・精米歩合違いでの味わいの比較も楽しめます。

  • 鶴齢 純米吟醸 無濾過生原酒 山田錦50%
  • 鶴齢 特別純米 無濾過生原酒 山田錦55%
  • 鶴齢 純米 無濾過生原酒 山田錦60%

ご家庭では一度に何本ものお酒を飲み比べることは難しいかと思いますが、パーティーなどのお集まりがある時などに、このようなお酒の楽しみ方はいかがでしょうか?きっと盛り上がりますよ。